ウィリアム・シャトナーというのは、僕にとっては永遠の宿敵です。
とにかく、かなりエキセントリックな演技プランを、非常に頭脳的に考えていらして、
そしてそれを何とかご自分の肉体を通じて形象化しようとするタイプの役者です。
ですから、生理的な発想に逆らって芝居を組み立てることがあります。
そこがシャトナーの魅力でもあり、吹き替える役者の立場から言うと、これが不条理。
どうしてそんな落とし穴をつくってくれるんだとか、どうしてもう少し気持ちよくこっちの情動を刺激してくれて
もっと気持ちよく芝居をさせてくれてもいいのになと思うところに、
グッとブレーキをかけられたり、ブワッと押し出されたりする。
そういう芝居が多い。
でも今は、それが僕にとっての生きがいになっています。
40年近くウィリアム・シャトナーさんという方と付き合ってきて、
少しずつその辺の、シャトナーの息合いというものがわかってきて、
それを少しずつ自分も正当化することができるようになってきた。
それが「スタートレック」によって、役者・矢島正明が育てられたという実感を、
本当に、70歳を過ぎた今になって思っております。
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